皐月文庫

本にだって雄と雌があります

管理番号149
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最終更新日2020年8月12日
小説 8

本にだって雄と雌があります

小田雅久仁

失礼ながらこんなふざけた表題で目を惹かないわけがない。しかしその実「本の位置を変えてはならない」という亡き父の遺言を破った主人公が遭遇する驚愕の光景と、そこから始まるミステリアスでユニークであらゆるジャンルが綯い交ぜになった壮大な冒険物なのである。

この物語に掛かれば偉人も日本語を喋るコミカルなただのおっさんと化すくらいのスケール感。とにかくもう夢中になって一気に読んでしまった。期せずして「少年の心を取り戻しちゃった…」という具合である。

この作品に登場するおびただしい知識量は、ちょうど図書館の本棚の端から端までを一緒くたにしたような、つまり本棚数個分の物語を破綻させずにひとつにまとめました的な印象。まさに本棚本。印象に残ったのはそういうカオスな物語であるにも関わらず、読んでいる最中にはその映像が鮮明に思い浮かぶこと。

もし自分が中学か高校の国語の教師だったら、夏休みの課題図書は間違いなくこの本にするつもりです。

内容を理解するには別の知識が必要か

個人的には必要はないと思うがもしかしたら聞き馴れない言葉に遭遇するかもしれない。ただ造語ではなくきちんとした用語ではあるので問題ないと思う。

読み易さについて

作中とある理由で様々な文体が登場する、文語に口語(方言等も)など、物語の性質上如何ともしがたいがこれで読み難いと感じる方はいるかもしれない。

誰にでもお薦めできる内容か

出来れば様々な方に読んでもらいたいエンターテイメント作品。

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