皐月文庫

マレ・サカチのたったひとつの贈物

管理番号49
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最終更新日2020年8月12日
小説 4

マレ・サカチのたったひとつの贈物

王城夕紀

「帰宅すると、彼女はいなくなっていた」自分の意思とは関係なく場所から場所へと一瞬に跳躍してしまう病、量子病に罹った女性の出会いと別れの物語。

腐り始めた資本主義社会が舞台の近未来SF小説でもある。量子力学の説明ではじまる第1節から148節まで、その言葉の選び方だとか文章自体の表現の美しさだとかは詩のようでもあるし、飽和する世界を飛び、出会い、気付き、そして真理に迫っていく純粋な成長譚でもある。

SFという括りではあるだろうし、そういった小道具やキーワードも多く使われているのだが、ともすればエンタメよりのファンタジックになりがちなSF的世界観ではなく良質なSF文学として大いに楽しめる作品だと思う。

内容を理解するには別の知識が必要か

小難しいキーワードも作中の説明を聞いていれば十分理解できるが、「量子力学」という近年の文系SFには切っても切れないテーマを概要だけでも勉強しておくとよいかもしれない。勿論その本質は難しい物理学のしかも最先端の分野なのだが、一般人にも理解できる程度にツボを押さえた言説などはネットにはいくつもあるので是非調べてほしいと思う。

読み易さについて

詩的表現、専門的な用語など多数あり。これをどう感じるか。

誰にでもお薦めできる内容か

いわゆるSFジャンルのマナーめいたものがあったとしても、それなしに十分楽しめると思う。創造のひとつ、文学のひとつであって決して特殊な内容ではない。

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