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最終更新日2020年8月12日
小説
4
マレ・サカチのたったひとつの贈物
王城夕紀
「帰宅すると、彼女はいなくなっていた」自分の意思とは関係なく場所から場所へと一瞬に跳躍してしまう病、量子病に罹った女性の出会いと別れの物語。
腐り始めた資本主義社会が舞台の近未来SF小説でもある。量子力学の説明ではじまる第1節から148節まで、その言葉の選び方だとか文章自体の表現の美しさだとかは詩のようでもあるし、飽和する世界を飛び、出会い、気付き、そして真理に迫っていく純粋な成長譚でもある。
SFという括りではあるだろうし、そういった小道具やキーワードも多く使われているのだが、ともすればエンタメよりのファンタジックになりがちなSF的世界観ではなく良質なSF文学として大いに楽しめる作品だと思う。