ものするひと
オカヤイヅミ
作家の「スギウラ」は今日も「言葉」について考えている。ご飯を食べている時も、歯を磨いている時も、警備員のバイト中でさえ、やっぱり「言葉」に取り憑かれている。小説を書くという創作のアレコレを「スギウラ」から垣間見る、いわば小説家の生態観察日記。全3巻。
小説家の〜と書いたが、多分創作を生業としている人間全般の、と言っても差し支えないと思う。勿論ただただ内幕をさらけ出してその奇特さを面白がるような構成ではなく、もっと密に「モノを作る人」の日常における気付きや、ぐるぐると巡る思考の変遷など、そういったどうにも表現することが難しそうな積み重ねをいともあっさりと、しかも丁寧に描きつつ、さらに他者の思想が関わることでそういうアイデアはどう変化していくのか、作家としての宿命のような生き方をこの絵でしか成し得ないというくらいのデザインで端的に表現しているように思う。
正直なところ、どんな媒体にせよこの物語のテーマは実は結構難しいことなんじゃないかなぁと。よくよく考えてみれば作家自身のそのままを描けばよいというものでもないし、多数派の意見が正解なわけでもない、かといって絵空事で描いてしまえばただのおとぎ話になってしまう。何処に「真実」というリアルな軸を置くのか。この匙加減を間違えず「創作者の生態」を漫画として落とし込んだことに心から敬意を表したい。この作品を読み終えて僕はやっぱり「凄いな」と感服した次第です。
内容を理解するには別の知識が必要か
特になし。
読み易さについて
問題なし。
誰にでもお薦めできる内容か
「ねぇ、私の話聞いてた?」そういうツッコミにあたふたする、そんなシチュエーション。ボーッとしてるのはその「言葉」についてむしろよく考えているからであって、決して邪険にしているわけじゃない。うーん、しかしよくできたキャラクターだ。つまりそういう「あるある」を日々感じている方、多分グッとくると思います。