管理番号174
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最終更新日2020年8月12日
小説
10
夏光
乾ルカ
夏光と書いて「なつひかり」という「め・くち・みみ」の第一部3編と「は・みみ・はな」の第二部3編からなる短編集。
紹介されたジャンルとしてはホラーということなのだが、より仔細に言えば怪異譚というようなニュアンスが一番近いと思う。第一部第二部とも表題の通り身体の部位をテーマにした短編が全部で6編。時代も風景も登場人物の事情もバラバラだが、希望や願望あるいは欲望といった抗うことの出来ない情をもって、さらにその先へと一歩踏み込んでしまった者たちの顛末を描く。
ただしこの6編それぞれに流れるトーンは多様で、不気味さ、薄気味悪さもあれば切なさやある種の優しさもあるところが面白い。それぞれの立場や思惑は違っても、回りくどい構成にはせず視覚や味覚あるいは嗅覚など、本能に繋がる部分へ直接訴えるようなそういう仕組みになっている。この仕掛けこそ本作の要点でもあるし、一筋縄ではいかない恐ろしさを見せつけてくる所以だと思うのです。
内容を理解するには別の知識が必要か
特になし。
読み易さについて
グロテスクな描写はほぼないが、視覚や嗅覚などの人間の持つ感覚に訴えるようなお話なので人によってはその恐怖が何倍にも膨れ上がる可能性が。
誰にでもお薦めできる内容か
タイトルの通り夏に読む一冊としてはまさに最適ですね、と言いたいところだが震え上がるような怖さ不気味さというより、上記の通り人間の持つ本質的な部分へアプローチするような内容なのでその点に合点がいくのであれば興味深く読めるはず。
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最終更新日2020年11月9日
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