皐月文庫

空電の姫君

管理番号745
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最終更新日2021年6月26日
漫画 28

空電の姫君

冬目景

かつて一世を風靡した伝説のロックバンドのギタリストを父に持つ女子高生「保坂磨音(まお)」と周囲の目を引かずにはいれない美人の同級生「支倉夜祈子(よきこ)」を軸に繰り広げられるバンド譚。ボーカルを事故で失ったバンド「アルタゴ」の面々や過去の面影をまったく感じさせない冴えない父とその周囲など、キャラクターの隅々まで冬目節が唸る生粋の青春モノだ。とはいえ本作を語る上での最も重要なポイントと言えば、その冬目節によって描かれる「ギターを掻き鳴らす女子高生(磨音)の図」、これに尽きる。なお本作は全6巻ではあるが最初の3巻は「空電ノイズの姫君」として幻冬舎より出版、その後講談社に移籍して続刊された。

冬目景の描く世界にはどういうわけか独特のリズム感があって、この感覚を言葉にするのは非常に難しいのだが、本作の題材にもなっているロック(多分グランジ・オルタナ系)ではなく、ジャズとかプログレといったようなその場の空気感を基調とするような雰囲気、すべてのキャラクターに波長のようなものが揺らめいていて、個としての側面をチラつかせながら、それぞれが交差する時に驚くほどミックスされたひとつの音になるような、そういう不思議な感覚がある。村上春樹的なニュアンスというか・・・、うん、ちょっとうまく言えないのだけど、ある種突き放したような視線を読者は持ち合わせつつ、何故かキュンとしてしまうシンクロ感を交互に味わえる不思議な作風、というような、まあ簡単に言ってしまえば他ではまあ味わえない「独特」な漫画なのだ。

だからこそ冬目景の描く世界と「音楽」はベストマッチだと言わざるを得ない。

本作はもともと短編として企画されたようで、意図せず長編になったと最終巻で作者が書き記しているが、まったく逆に「イエスタデイをうたって」のような大長編であったならば、最終巻の強引さには気付かなかったかもしれない。しかしながら前述の通り冬目景が描く「ギターを持った女の子の図」で多分この物語の魅力はほぼ完遂していると言っても過言ではないので、個人的には良作のひとつに加えたいところ。

内容を理解するには別の知識が必要か

必要なし。

読み易さについて

かつての「羊のうた」から変わらないこの独特なリズム感。この感覚を是非とも味わってもらいたいと一ファンとしては願っております。

誰にでもお薦めできる内容か

誰にでもお薦めできる。

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