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最終更新日2020年8月12日
小説
5
アサッテの人
諏訪哲史
群像新人文学賞と芥川賞をダブルで受賞。作者も書いているが小説による小説批判。物語すら壊してくる。「私」と読者とアサッテの人こと「私」の叔父と叔父の妻朋子さんの世界のお話。
哲学科出身の作者が綴る日常の中の宇宙とは、と言ったような一般人には至極どうでもいい学問を「いやいやどうでもよくない」と改めさせるに十分な問題作なのではないだろうか。メタフィクションの体をとりつつも、読み手と一体となって問題を捏ねくり回すこの物語には、他にはない緊張感があるのも事実。
「壊す」こと「分解する」ことについて創作のステップとしては正しいし、おそらく作り手の相当数が当たり前のこととして捉えていると思う。しかしその混み入った過程を論理的に示すことが、これほどの価値になるのかと作り手の多くはそう思うに違いない。そんなふうに真面目が過ぎたユーモアとそのズレを楽しみつつ、ニヤニヤとして一気に読んでしまったのだった。
内容を理解するには別の知識が必要か
何を持って読めばこの作品の中身をもっと知ることができるのだろう。哲学か思想か、多分そのどちらも答えにはならないんだろうな。
読み易さについて
読みにくさがあるとすれば、物語というよりある種の解説書として読むと良いかもしれない。或いは短いお話なので何度も読める楽しさもある。
誰にでもお薦めできる内容か
通常の物語作品とはやはりどうあっても違うので、ちょっと変わったものが読んでみたいという方には最適。あとは勿論モノを作る人。
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最終更新日2020年11月9日
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