皐月文庫

千年万年りんごの子

管理番号154
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最終更新日2020年8月12日
漫画 7

千年万年りんごの子

田中相

青森県は昭和中期の弘前市を舞台に、リンゴ農家に婿入りすることになった捨て子の「雪」くんと天真爛漫なリンゴの娘「朝日」さんの切ない夫婦の物語。全3巻。

図らずも村の禁忌を破ってしまった彼らの顛末を描いているのだが、風俗や伝説、オカルトめいたファンタジックな展開がどうだとか民俗学的なアプローチがどうだとか、そういう感想は正直野暮な気がする。捨て子の彼と大家族に生まれた彼女がグラデーションのように絆を深めていく愛のお話であるし、抗うことのできない壁にどう立ち向かっていったのか、という普遍的な生き方のお話でもある。

この物語の終盤、正直に告白すると感極まって涙が出てしまったのは、それまでの積み重ねに二人のドラマの終着点をきちんと読み取れたからであり、あるいはクライマックスまで間延びすることなく二人の情に寄り添うことができたからだと思う。これが初連載作品だとは本当に思えない。

内容を理解するには別の知識が必要か

必要なし。閉鎖的な村の特徴、リンゴ農家の悲喜交々、神と人、そんな地方独特の文化風習については、すべてこの物語の中で説明し切れていると思う。

読み易さについて

問題なし。

誰にでもお薦めできる内容か

特に地方の風習やそれに纏わる超自然的な物語・伝説などに興味のある方はその入口の作品として最適だと思う。行き着く先はきっと諸星大二郎とか星野之宣なんでしょうね。

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