皐月文庫

恩田陸

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最終更新日2020年8月12日
その他 4

猫と針

恩田陸

ある風の強い日、高校で映画研究会に所属していた5人は、同窓生の葬式帰りに集まって昔話に花を咲かせる。中座して輪から外れる者が出ると、話題はその人物に切り替わる。ちょっとづつ現れる奇妙な出来事。いつしか話題は高校時代の謎めいたとある事件へと向いていく。喪服姿で語られるサスペンス劇。本作は小説ではなく、演劇用の戯曲、脚本(上演は「演劇集団キャラメルボックス」による)である。

映画「レザボア・ドッグス」に着想を得た、とあるが、残ったのは黒服とサスペンス的要素くらいで、ようは絵面としてのスタイリッシュさを求めた結果、葬式帰りのシチュエーションに落ち着いたという形だ。しかしだからと言って「クスッ」とするようなお目出度さはない、不気味なほど整然とした黒い人たちの静かな舞台であり、様々な仕掛け、構造が入れ子になって、その実一筋縄ではいかない物語になっている。内容をかいつまんでもきっとネタバレになってしまうと思うので詳細は避けるが、後書き解説にある演出家や演者が感じた小説っぽさというのは、筋書きから醸し出されているそういう複雑な緊張感によるのではないかなと感じている。

確かに台本とは演じられて初めて完成するものだ。こうして一冊の本になったとしても「作品だ」と言うことは憚られるのかもしれない。だが作家本人の日記的回顧録も掲載されており、共同作業のその一端を垣間見るいい機会ではあるし、小説家として戯曲を書く難しさ、特に演者たちによって気付かされたことなど、本人の率直な感想も併せて楽しめるものはそうそうないと思う次第だ。

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小説 14

ネバーランド

恩田陸

冬休みを迎えた男子校の学生寮で、帰省せず居残りを決めた4人の少年たちのそれぞれを描く青春小説。

彼らが抱える問題と巻き起こる事件、明かされる秘密。後書きで作家自身が萩尾望都の「トーマの心臓」をやりたかったと述懐している通り、あの時分の少年が持つ特有の表裏のようなもの、そんなものを逆に溌剌としたキャラクターたちに託して実に爽やかな青春学園ものに仕上がっていると感じた。

寮という閉鎖的な空間で、それでも4人しかいないというシチュエーションがもう既にミステリーの舞台としては申し分ないし、彼らがなぜ帰省せず、残らなければならなかったのか、彼らにどんな事情があったのか、それを知りたいと思わせる登場人物たちの個性があるのだ。しかも季節は冬。春でも夏でもないこの季節特有の雰囲気も相俟って舞台がより際立つような、そんな仕掛けに満ちている。前述の後書きにもある通り、作家自身この作品に対する思いは様々あるようで確かに仰る通り後の作品のベースになったようなそんな感じだ。

ちなみに萩尾望都の「トーマの心臓」は僕が学生の頃に読んで当時頭が破裂するほどの衝撃を受けた作品のひとつだということを補足しておきます。