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最終更新日2020年8月12日
小説
6
明るい夜に出かけて
佐藤多佳子
ある事件がきっかけで心を患い、大学を休学してコンビニでアルバイトすることになった主人公の再生と成長の物語。
バイト仲間の先輩と客としてやってくる小動物のような女の子との交流を経て、自身の過去と向き合えるようになっていく。ネット、生配信、そしてラジオ。この物語では新旧のメディアが入り乱れつつも、「顔の見えない声」や「本名ではないハンドルネーム」が暗がりの中の街の明かりのようなポツポツとした力強さを持って物語を前へ前へと進めていく。
ネットもラジオも目に見える繋がりは皆無なのに、どういうわけか誰よりも深く繋がれると信じている一方、現実の繋がりは目に見えない壁に囲まれていてどうにも出来ない。絶望の上にやってくる優しさだとか暖かさだとか、軽々しく言えることではないのだが、この対比と一体化がこの物語の軸になっていると思う。
なお、作中に登場するラジオ番組は実在する本物の番組で、パーソナリティも本人たちがそのまま登場(?)する。