皐月文庫

モノつくり

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最終更新日2020年8月15日
漫画 20

ものするひと

オカヤイヅミ

作家の「スギウラ」は今日も「言葉」について考えている。ご飯を食べている時も、歯を磨いている時も、警備員のバイト中でさえ、やっぱり「言葉」に取り憑かれている。小説を書くという創作のアレコレを「スギウラ」から垣間見る、いわば小説家の生態観察日記。全3巻。

小説家の〜と書いたが、多分創作を生業としている人間全般の、と言っても差し支えないと思う。勿論ただただ内幕をさらけ出してその奇特さを面白がるような構成ではなく、もっと密に「モノを作る人」の日常における気付きや、ぐるぐると巡る思考の変遷など、そういったどうにも表現することが難しそうな積み重ねをいともあっさりと、しかも丁寧に描きつつ、さらに他者の思想が関わることでそういうアイデアはどう変化していくのか、作家としての宿命のような生き方をこの絵でしか成し得ないというくらいのデザインで端的に表現しているように思う。

正直なところ、どんな媒体にせよこの物語のテーマは実は結構難しいことなんじゃないかなぁと。よくよく考えてみれば作家自身のそのままを描けばよいというものでもないし、多数派の意見が正解なわけでもない、かといって絵空事で描いてしまえばただのおとぎ話になってしまう。何処に「真実」というリアルな軸を置くのか。この匙加減を間違えず「創作者の生態」を漫画として落とし込んだことに心から敬意を表したい。この作品を読み終えて僕はやっぱり「凄いな」と感服した次第です。

漫画 16

モディリアーニにお願い

相澤いくえ

絵に描いたようなロックスター的人生を35歳という若さで終わらせた伝説の画家・彫刻家モディリアーニ、その名を表題に付けて送る若き美大生3人の希望と苦悩に満ちた青春譚。全4巻。

「バカでも入れる小さな美大」を舞台に個性の違う3人の若者たちがそれぞれの思う「芸術」を模索していく。創作とはなんだろう、才能とはなんだろう、モノつくりに従事する人間には至上の命題、人生すら巻き込む根源的な問いに足掻いていく様を描く。ただしその見せ方には叫びたくなるほどのどうにもならない苦悩だとか、それでも突き放さず寄り添うような優しさに溢れていて、いやー、これは絶対実体験も混ざっているよなと思ったら、なんと現役の美大生が描いていたという、そういうお話。

何だか無性に「分からなくなる」瞬間、青春時代にあったであろう前の見えない恐れだとか不安のようなものを一層深みにハマってしまいそうな美大という「創作」現場に落とし込んで、(誤解を恐れずに言えば)より生々しくそしてより痛々しい強烈な苦悩を見せ付けてくる。ただこうした作り手の苦悩は勿論若さゆえのものではなくて、幾つになっても付きまとう宿命みたいなものなのだが…。

多少なりともクリエイティブな現場にいるのであればこの作品の持っているテーマは痛いほどよく分かると思う。そしてきっと、あの頃の正負問わないエネルギーのようなものを感じ取って何か新しいことの契機にするには最適の作品だと感じています。