皐月文庫

田島列島

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最終更新日2020年10月27日
漫画 25

水は海に向かって流れる

田島列島

高校生になった「熊沢直達(くまざわなおたつ)」くんは、漫画家になっていた叔父の元に居候することとなる。アパートというよりシェアハウスのようなその家には風変わりでクセの強い面々が揃っていたが、一見して一番まともに見えた10歳年上のOL「榊」さんは、実は直達くんと浅からぬ因縁で結ばれていた。この物語は過去から現在そして未来へと繋がる様々な絆をテーマにした「家族」譚だ。全3巻。

過去の不義から繋がる因縁。やろうと思えば何処までも重厚なシリアスものにできたはずだ。ところがこの物語はそんな重そうな展開に陥る一歩手前で、トボけたコマを大胆に差し込み、筋書きの力加減をマイルドに調節してくるのだ。この「極限」に振り切らない幕切れは簡単に言ってしまえば「なんちゃって」で方を付けるあの感覚で説明がつくのかもしれない。だが波風が立ちそうで立たない揺らぎの部分を筋書きではなくシリアスとユーモラスの振幅で語るこの構造に、家族や家族めいたものの理想の絆として投影したかったのではないか。かつてあった「崩し」の時代性を基にした配慮ではなく、最終巻巻末の後書きから察するにおそらく作家自身の資質が色濃く反映された故の構造なのだと思う。

世の奥様方に向けられた午後のテレビドラマにはないそんな振幅を、読み手はどう感じるか、結果としてひとつの答えに行き着かないだろうという曖昧さに結実する。また年少の「直達」くんとその同級生が気を使い「配慮」する側であり、反対に年長の「教授」や「親」たちが自由自在であること、その中間にある「榊」さんが繋ぎ(あるいはワイルドカード的な)であるという図式がその構造に拍車を掛けている。

緊張のキワで逆に舵を取る、世代の役割を逆転させる等、この「逆を衝く」という感覚こそ本作の魅力とも言えるだろう。多様性という言葉で片付けるのではなく、作家の思う筋書きにまんまと乗せられ、振り切らない揺らぎの中でシリアスを堪能できる稀有な作品なのだ。

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