皐月文庫

リイド社

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最終更新日2020年8月12日
漫画 19

ニュクスの角灯

高浜寛

1867年開花期の日本・長崎。触れた物の過去や未来の持ち主を透視してしまう「美世」さんは、掴み所のない店主「モモ」が営む道具屋「蠻(ばん)」の売り子として雇われることとなった。世はまさに「パリ万博」。日本のものであれば工芸・美術品だけでなく、ただの包み紙ですらヨーロッパでは高値で取引される商品となる、これはそんな特別な時代で描かれる彼女と彼女を取り巻く人間たちの一種の冒険譚だ。全6巻。

幕末から明治初期に掛けての文化文明の混沌さは、僕個人としてはもはやスチームパンク的な面白さとイコールだったりする。その上で本書は「閉ざされてきた日本の文化風習」と「最先端の欧州文明」、まさに水と油のようなものの出会い、その端緒を紐解く一種の歴史書、解説書のような作りになっているのだ。

勿論そうは言ってもしっかり人間ドラマとしての体裁は外していないし、「大浦慶」や「松尾儀助」など実在した歴史上の人物の登場も物語に奥行きを与えていると言っていい。ただ一言(誤解を恐れずに)付け加えるならば、この物語では「女性」が大変強く色濃く描かれており、時代背景を考慮すれば、この点こそ本作におけるもうひとつの重大なテーマのように感じられたのだが。

いずれにせよ、作家の熱意というか「この時代、この世界は面白い、だから伝えたい」という欲のようものを嫌味なく受け取れる骨太の作品だと思う。

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